チェイシング・エイミー 感想

  

今年(1997年)、アメリカで最も低予算でもっとも効率よく利益を上げた映画。「エイミー」はレズビアンを意味するスラング。ひと目惚れした彼女がレズだと知った男が、ダメとわかっていながら彼女を追っかけるが、実は……。さんざん笑わせて、いつのまにか人生の深淵をのぞかせるケビン・スミス監督(27歳)はジャームッシュみたいに「映画史」なんかにコビてないとこがいい。なによりもハートにきたのは、主人公がマイナー・コミックの漫画家で、彼女もマンガ家ってとこ。コミコン(アメリカのコミケ)で始まってコミコンで終わる物語。マン研出身のオレとしては、これが泣かずにいられるか!(町山智浩/映画秘宝期間限定版ベストテンなんかぶっとばせ!!)

1998年公開、ケヴィン・スミス監督。
町山さんの著書「トラウマ恋愛映画入門」でも冒頭に紹介されています。

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この本によると映画のストーリーは監督の実体験、しかもその時の元カノを主演女優に起用しているそう。
アメリカ人はこういうのドライなんですね、ていうかメンタル強えーな!

主演はベン・アフレック。この人はなかなか浮き沈みの激しい人生を送ってますよね。

1997年 幼馴染で親友のマット・デイモンとの共同脚本作『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』でアカデミー脚本賞受賞

1998年 ブルース・ウィリスと共演した『アルマゲドン』が大ヒット。一躍スターダムに

2001年 アルコール依存症のリハビリを開始
2002年 『ジーリ』で共演したジェニファー・ロペスと婚約するもゴシップで叩かれ映画は大コケ。その後2004年に破局

2012年 監督3作目の『アルゴ』がアカデミー作品賞を受賞し復活

2014年 デヴィッド・フィンチャー監督の『ゴーン・ガール』主演

2017年 ハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ問題に対する発言での嘘を追求され叩かれまくる
2018年 再度アルコール依存症のリハビリへ。2005年に結婚したジェニファー・ガーナーとの離婚成立 ←今ココ

果たして、今後復活の目はあるのでしょうか?

他の共演者はあまり有名な人はいないのですが、チョイ役でマット・デイモンと弟のケーシー・アフレックが出演しています。
この人も色々やらかしています。

そしてもう一つ言及しておきたいのが映画終盤に唐突に登場する二人組、ジェイ&サイレント・ボブ。一応ホールデンベン・アフレック)の描いているコミックのモデルという設定ですが、「機械仕掛けの神」よろしく彼に重要なアドバイスを与えます。
ケヴィン・スミス作品はヴュー・アスキューニバースと呼ばれる同一の世界観の為、彼らは色々な作品に登場します。
サイレント・ボブ(ひげ面の方)は監督本人が演じています。

さて感想ですが、まず最初に思ったのは「この映画は、当時と比べてLGBTの市民権が得られている現代の方がより共感を得られるのではないか」という事。
ただし、テーマとしてはそれよりも「愛する人の過去を許せるか」に主題が置かれていると感じました。

映画では彼女の過去を知った、典型的な恋愛経験の無いオタクであるホールデンの言動や態度がとにかく酷い。さらにサイレント・ボブのアドバイスを受け下した最終的な結論には度肝を抜かれます
ただ、現在の私は年齢と経験をそれなりに重ねたから彼の愚かさを笑えるのであって、若い時に同じ立場になったら同じような行動をとらないとは言い切れないと思いました。

まさに「男は恋愛のアマチュア」を地で行く映画です。


なんと!安野モヨコ先生によるコミカライズも有り。