バッドトリップ! 消えたNO.1セールスマンと史上最悪の代理出張 感想

  


シダー・ラピッズはアメリカのアイオワ州に実在する都市の名前なんだ。主演のエド・ヘルムスは「ハングオーバー」の眼鏡の歯医者さんね。あの人、実はピアノの弾き語りとかもできるものすごく才能ある芸人なんだ。でも、見た目はマジメなサラリーマンにしか見えないよね。それをすごく活かした話。
主人公はウィスコンシン州のど田舎に生まれた男で、子どもの頃に父親を交通事故で亡くしたとき、地元の生命保険会社の人に助けてもらったことに感動してその会社に入社した男なのね。彼が面白いのは、童貞捨てた相手が自分の中学校の先生で、60過ぎのシガニー・ウィーバー(笑)。で、ずっとその後も付き合ってる。要は子どものまま大人になっちゃった男。しかも、故郷をほとんど出たことがない典型的な中西部に住むキリスト教原理主義者の中産階級白人。ところが、会社の先輩が窒息オナニーで死んじゃって、代わりに生命保険会社の会合に出席するため、初めて人口10万人以上の都会、”シダー・ラピッズ”に研修に行くわけ。そこで初めて黒人を見て驚いたり、S・ウィーヴァー以外の女性とセックスしたりするわけ。
ところが、自分の勤める会社が全国チェーンの大手保険会社に吸収されることがわかって、男の魂にポッと火が点く。地元のローカルな銀行や保険会社って昔はいっぱいあってさ、彼らは街の人たちをみんなで協力して助け合うために仕事してたのに、顧客がほしい大手の生命保険会社がそこに買収を仕掛けてくる。大企業は田舎町の人なんてどうでもいいから、買収した後いきなり支局を閉鎖しちゃう。オレも実際、田舎で交通事故にあったら保険会社が大手に吸収されてて、人員削減して担当者のカバーするエリアがデカいから「1週間待って」って言われたよ。そんなことになったら地元の困ってる人を助けられないって、主人公は仲間と組んで陰謀を叩き潰そうとする。
最初はキリスト教原理主義者の田舎者を皮肉ってる話なんだけど、後半はめちゃくちゃ感動する熱い展開になってく。これはおそらく『スミス都へ行く』(39年)が元になってて、その保険会社バージョンだね。(町山智浩/映画秘宝2012年3月号)

原題は『Cedar Rapids』(舞台となる街の名前)ですが、主演のエド・ヘルムズが出演したヒット作『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』にあやかって、こんな長い邦題になってしまいました。
しかし、内容は『ハングオーバー!』やジャケットのイメージのようなドタバタコメディというよりは製作に名を連ねているアレクサンダー・ペインの監督作『サイドウェイ』に似た雰囲気の、大人になりきれていない男の成長ストーリーといった感じ。
ラストがちょっとあっさりしすぎだったかな。

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 町山智浩さんによると、この映画が下敷きになっているそうです