鶴見の坂道 その15 古坂(ふるさか)

 

諏訪坂下から寺谷方向に百メートルほど進み、橋爪病院の方から北進する道が交差するところを、右に諏訪坂に向って登りはじめると道は坂の中ほどから左に右に電光形の急坂となり、登り切って広い諏訪坂道を横切り、住宅の中を三十メートルばかり進むと左にゆるやかな登りとなり、旧諏訪坂から延びる大山街道に接続します。現在の諏訪坂が開設される前(昭和初期)までは、電光形の急坂を登り切ったところから、往古の諏訪館時代に、東寺尾方面からの敵を防ぐために構築されたと思われる空堀の跡があり、道はこの堀の底を通っていました。現在は大正末期に実施された宅地造成工事で、空堀の跡などと想像さえできません。昔から、寺谷戸から北寺尾・末吉方面に用たしに行ったり、台地上の畑に農作業に行くのに諏訪山の裾を回るより近道だったのでこの坂を利用したのでしょう。坂の途中の右側には昔から清水が湧き出ていて、往き来する人たちの喉を潤してくれました。この湧水は今でも民家の庭先に残っていて、家庭用水として利用されています。このように相当古くからこの坂道は付近住民たちに利用されておりましたので、昭和初期に新しい坂道(諏訪坂)が開設されたとき、この諏訪坂に対して古坂と呼ばれるようになったそうです。今日では、坂の左右には白亜のマンションが建ち並び、電光形の坂道は、右側は自転車用、左側は階段(人道)とコンクリートで築造されました。坂の途中、清水が湧いている上の方の斜面には十数本のシュロの木が茂り、情趣を漂わせています。(「鶴見の坂道」より)

  • 勾配 ☆☆
  • 湾曲 ☆☆
  • 風情 ☆☆
  • いわれ