テイラー・オブ・パナマ 感想

『ハピネス』の少年愛オジサンの軍人役が爆笑。(町山智浩/映画秘宝2002年3月号)

2001年公開。原作は元MI6(英国諜報部)で、数々のスパイ小説を発表しているジョン・ル・カレ。彼の作品は、これ迄にも何本も映画化されています。

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監督はジョン・ブアマン。彼の作品を観るのは恐らくこれが初めて(もしかしたら『脱出』は子供の頃日曜洋画劇場で観たかも)。他には『未来惑星ザルドス』『エクソシスト2』『エクスカリバー』あたりは題名だけは聞いた事がありますね。
   
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主演は5代目ジェームズ・ボンド でお馴染みのピアース・ブロスナン
彼はボンド役者としてイメージが固定されるのが嫌だったようで、『ゴールデンアイ』と『トゥモロー・ネバー・ダイ』の間に『マーズ・アタック!』に出演するなど多くの映画に参加しており、本作も『ワールド・イズ・ノット・イナフ』と『ダイ・アナザー・デイ』の間に位置しています(まあ、本作はボンドのイメージをパロディとして利用していますが)。
   

しかし、この映画の本当の主役はジェフリー・ラッシュの方でしょう。
彼は1996年に『シャイン』でアカデミー主演男優賞を受賞し、その後も何度もノミネートされている演技派。近年では『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズや『英国王のスピーチ』が印象に残っています。
  

他にも彼の息子役で、数か月後に『ハリー・ポッターと賢者の石』で大ブレイクするダニエル・ラドクリフが出演したりもしています。

パナマと言えばタックス・ヘイヴン」「マネーロンダリングパナマ運河で有名。教科書でしか知らなかった国でしたが、この映画では実際に現地ロケを敢行しており、その空気を味わえます。

ストーリーの方は、
不祥事でパナマに飛ばされて来たイギリスのスパイ(ブロスナン)が現地での情報屋として引き入れた経歴詐称の仕立屋(ラッシュ)。彼が追い詰められ思わずついた「パナマが運河を第三国に売ろうとしている」という嘘がイギリス・アメリカを巻き込んだ大騒動に…
と言った感じ。

スパイアクションを期待すると肩透かしを食らってしまうかもしれませんが、ボンドとは正反対のちゃらんぽらんな諜報員を楽しそうに演じるブロスナンと、真面目だが過去を偽り嘘をつく人物という難しい演技を見せるラッシュとのアンサンブルが素晴らしく最後まで楽しく観る事が出来ました。

それにしても同じル・カレ原作の『裏切りのサーカス』の原題が『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』だったり、『キングスマン』の本部がセビルローにある紳士服店だったりと、イギリスのスパイと仕立屋には何か特別な関係があるのでしょうか?