【UTAMOVIE】宇多丸 映画批評『ぼくのエリ 200歳の少女』2010.08.07(ザ・シネマハスラー&ムービーウォッチメン)
2010年公開。
多分人生で初めて観たスウェーデン映画。
原題は『Låt den rätte komma in』、英題『Let the Right One In』。直訳すると「正しき者を中に入れろ」みたいな感じ。
また、この作品には原作小説があって、そちらの邦題は「MORSE -モールス-」。
さらにハリウッドで『LET ME IN 』のタイトルでリメイクされ、邦題は『モールス』。ちょっとややこしいです。
※ネタバレします
主人公・いじめられっ子の孤独な少年オスカーを演じるカーレ・ヘーデブラント(パッケージ上)。サラサラの長い金髪に透き通るような白い肌の美少年で、最初こちらが「エリ」なのかと思ってました。
そしてエリ役のリーナ・レアンデション(同下)。角度によってすごく年老いて見えたりする不思議な印象の少女。役柄にぴったりだったと思います。
今回原作は未読で観賞し、後で原作の内容を調べたのですが概して映画のアレンジの方が良かったように感じました。
まずなんといってもエリの「保護者」である中年男・ホーカン(本編では名前は出て来ません)。
原作では小児性愛者であるがゆえエリに付き従い、最後には怪物化してしまうのですが、映画ではむしろ昔はオスカーとエリのような関係であったのではないか?ひいてはオスカーも将来彼のようになってしまうのではないかと想像力をかきたてられるキャラクターとなっており、彼がらみのシーンはどれも非常にせつない印象を受けました。
他にもオスカーの父親が原作では酒乱という設定だったのが映画ではなんとなくホモセクシャルを匂わせるような感じになっていたのも良かったと思います。
そして公開時さんざん話題となった問題のボカシシーン。
途中のエリのセリフでヴァンパイアであるという「彼女」のもうひとつの正体はなんとなく類推出来るのですが、ここはオスカーがそれを知る重要なシーンでもあるので、やはり非常に残念な処理であると言わざるを得ません。
閲覧注意:一応小さく貼っておきます。
基本的には抒情的なラブストーリーであり、いわゆるホラーシーンは抑え目(それゆえラスト近く、プールの場面でのショッキングさが際立ちます)。
ジャンルを超えた傑作といって良いと思います。
※でも一つだけツッコみ所が。友人や恋人をエリに殺された男・ラッケが彼女の家に侵入するシーン。
オスカーも交えた三人の戦いが終結した後、上?の部屋の住人から「何時だと思ってるんだ!」と怒鳴られますが、
エリが寝ていたんだから真昼間なのでは?
おまけ 吸血鬼の弱点
- 日光
もっともポピュラーかつほとんど全ての作品で適用されていると思います。
- 炎
他の魔物ではよく見るのですが、日光のイメージが強すぎて吸血鬼ものではあまり見かけない気も。
- ニンニク
けっこうポピュラーだと思うのですが、絵的に映えない為?かコメディ的な使われ方が多いのではないでしょうか?
- 十字架
これも有名ですが、最近はあまり見ませんね。聖水とかもこの仲間。
- 銀の武器
どちらかというと狼男のイメージ。
- 流水
跨いだり、泳いだりできないそうです。これは見た事ないなあ…
- 招かれないと入れない
これはこの映画で初めて知りました。さまざまなメタファーとして使えそうですね。
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