哀しき獣 感想


宇多丸が韓国映画「哀しき獣」を絶賛『とんでもなくパワフルな映画』

2012年公開。監督はデビュー作『チェイサー』でいきなり国内500万人を超える動員のヒットを飛ばしたナ・ホンジン
その『チェイサー』で主演した二人、ハ・ジョンウキム・ユンソクが前作とは全く違った役柄をそれぞれ演じています。

ストーリーは、

中国、ロシア、北朝鮮に国境を接する延辺朝鮮族自治州の中国側に住むグナム(ハ・ジョンウ)は、タクシー運転手をする傍ら、借金返済のために給料を賭け麻雀につぎ込む堕落した生活を送っていた。さらに、韓国に出稼ぎに行った妻からの送金も連絡もない。窮地に瀕したグナムは犬商人で地下社会のボス、ミョン(キム・ユンソク)に持ちかけられた請負殺人の依頼を承諾し、韓国へ向かう。(Wikipedia

と言った内容で序盤はノワール的な雰囲気で描かれ、そこも十分に面白いのですが、何と言ってもこの映画の白眉は中盤の逃走劇でしょう。
グナムの生命力溢れる疾走、息をもつかせぬ展開で観ているこちらをグイグイと引っ張ってくれます。
※本作の中でグナムがガツガツ食事をするシーンがやたらと出てきて、自分は彼の生命力の強さを表現しているのかなと思っていたのですが、横で観ていた息子が「いくら食べても満腹になれないって事じゃないの?」と言っていて感心しました。お前、父ちゃんより深く観てるよ!

そして、もちろん誰もが口を揃えるミョン社長の魅力。部下を差し置いて自らが前面に立つリーダーシップ、ちょっとナイフで刺された位ではビクともしないデタラメな強さ、使う武器は手斧・牛刀・牛骨。ある種ホラー的な恐ろしさを醸しつつも、どこかチャーミングで憎めないキャラクターです。

編集のつなぎが良くなかったり、ストーリーにはややアラがあったりしますが「細けえ事はいいんだよ!」の精神で楽しませてくれる傑作です。


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