ベルヴィル・ランデブー 感想

 

テリー・ギリアムティム・バートンはアニメを撮り続けるべきだった。今、世界中のアニメはシュールリアリズムと可愛さばかり追い駆けている。そんな時代にひさびさに楽しい悪夢を見せてくれるのが、このフランス・カナダ・ベルギー合作映画『ベルヴィルの三つ子姉妹』だ。美少女は出ません!
「ベルヴィルの三つ子姉妹」とは、ニューヨークとモントリオールを合成した架空の街ベルヴィルで1920年代に一世を風靡したコーラス・ガールのこと。映画は彼女たちのステージを記録した古いフィルムで始まる。ギターを足で弾くのはジャンゴ・ラインハルト。ジョゼフィン・ベイカーとフレッド・アステアがクネクネと踊りまくる。このオープニングはキャブ・キャロウェイを出演させたフライシャー兄弟の『ベティ・ブープへのオマージュだが、本編は監督のシルヴァン・ショメが愛する『101匹わんちゃん大行進』『おしゃれキャット』のあのタッチ(わかるね?)をもっとダークでグロにした感じになる。
舞台は50年代のフランス。ツール・ド・フランスでレース中に選手が誘拐される。選手の1人の「お婆ちゃん」は誘拐犯を追い駆けて、足こぎボートで大西洋を横断し、ベルヴィルにたどり着く。誘拐犯はフランス系ギャングで、賭け競輪の選手を必要としていたのだ。「お婆ちゃん」は孫を救うため、年老いた「ベルヴィルの三つ子姉妹」とギャングのアジトに殴り込みをかける。セリフは一切ない。タイヤの代わりになる犬、ビルのように空高くそびえる貨物船。カエルを食べる三つ子、など徹底的に奇怪なビジュアル・ギャグの連続で見せる。クライマックスはギャングの改造シトロエン軍団とのカーチェイスだが、逃げる「お婆ちゃん」たちは歩くより遅い!なぜかは観ればわかる!(町山智浩/映画秘宝2004年3月号)

2004年公開、シルヴァン・ショメ監督。
コミック作家からアニメに進出した彼は、1998年には短編『老人とハト』を発表し各方面で高く評価され、本作で長編デビューとなりました。

日本では現在の「三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー」の前身である「ジブリCINEMAライブラリー」名義で発売。これは、世界の優れたアニメーションをセレクトし広く紹介する活動で、 高畑勲宮崎駿が推薦する作品を中心に、まだまだ知られていない世界の名作の数々をシリーズ化したもの。実際本作のDVDには高畑勲とショメ監督の対談が収録されています。

私が海外アニメで観た事があるのは殆どがアメリカ製のアニメですが、特にディズニーピクサーは多人数で脚本をブラッシュアップしていく分、完成度が高い一方で没個性になりがちな印象を受けます。
今回、フランス製のアニメを初めて観たわけですが、最初に抱いた感想はやっぱり"オシャレ"。キャラクターデザインにはやや抵抗を感じつつも、独特のビジュアルや本場のエスプリの効いたダークなギャグセンスには作家性を強く感じましたし、一方で終盤の展開ではハリウッド的なサービスも備えており、芸術に走り過ぎない監督のバランス感覚にも感心しました。


長編2作目。キャラクターがリアル寄りなので、こちらの方が見やすいかも。内容はチャップリンとか寅さんみたいな感じ。


3作目では実写にも挑戦。