リズと青い鳥 感想


先日『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』観賞時に本作を先に観なかった事を激しく後悔したので、早速レンタルしてきました。
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いやぁ、これは傑作ですね。

山田尚子監督は本作が劇場長編4作目。何気に全作観てます。
  
1、2作目はTVシリーズの続編、3作目は全7巻の漫画原作の映画化。一応本作もTVシリーズの続編とも言えますが今までで一番、事前知識や補完を必要としない一本の映画としての完成度が高いと感じました。

この作品は原作小説「響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章」を二本の独立した映画として制作するという、ちょっと特殊な企画の内の一本として生まれました。そして結果としてそれは大正解だったと思います。
なぜなら、主人公の二人鎧塚みぞれ傘木希美TVシリーズ第2期の前半でもメインキャラクターとして登場するのですが、本編はあくまで主人公・黄前久美子の視点で語られるのでシリーズ13話を通して見た時に、どうしても二人のパートは浮いた印象となってしまっていたからです。その反省を活かした(?)結果、本作ではストーリーを二人の関係に極力絞り込み、非常に純度の高い作品として仕上がっていまいした。(必然的に3年生チームがメインとなる為、『誓いのフィナーレ』で私が物足りなく感じていた吉川優子の部長としての姿もやや垣間見られたので、ちょっと安心しました

※一方で、TVシリーズ視聴済の者として見た場合一番感じたのは希美に対する印象の変化でしょうか。彼女は1年生時に一度退部しているのですが、その際みぞれに一言もなく吹奏楽部を去っていました。そんな希美に対して当時悪い印象を持つ視聴者は多かった気がしますし、また「隣のクラスなのに二人が全く顔を合わせないのは不自然だ」みたいな意見もよく聞きましたが、この映画を観た後だと希美がみぞれに何も言わなかった本当の理由(おそらく才能に対する嫉妬を含んだ複雑な感情)が垣間見えたり、実は希美もみぞれを避けていたのではないかと想像したりしました。

以前私は『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』を評した時に、「ストーリーの強度があればある程、原作の元々のキャラクターがノイズに感じてしまう」というような趣旨の事を述べたのですが、この作品でも、本編主人公の久美子やアニメとしてのキャラクター色が強い緑輝らが登場すると、どうしても『ユーフォ』の世界に引き戻される感覚がありました。
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このあたりは人気作品のスピンオフとしてどうしても避けられない部分なのかもしれません。なので山田監督には次回作は是非オリジナル作品に挑戦していただきたいなと思いました。